ファーダ・フレディ(Faada Freddy)の「Gospel Journey」

ソウル・R&Bシリーズ第5弾?

これは、すばらしいアルバム。(ソウル・R&Bシリーズ第5弾は、こじつけ)
ファーダ・フレディは、セネガルのヒップホップグループのダーラ・ジー(Daara J)のボーカリストの芸名。その2004年の「ブーメラン」は、ミュージックマガジンでも、ヒップホップぎらいの人にもおすすめと少し話題になったことがある。そのアルバムは、ソウル、レゲエ、ラテンなど多くのジャンルの音楽が詰まったポップ・ミュージックだったが、まさかこんなすごいアルバムを作るとは思わなかった。
 このアルバム、iTunesではかなり前から販売されており、気にはなっていたのだが、やはりCD以上の音で聞きたいので、EL SUR RECORDSにオーダして、やっと入手できた。
 楽器はまったく使わず、声と体のパーカッションのみで作り上げたと、CDジャケットに大きく書かれている。全体的に、高い音楽性と曲がすべて良いし、少ししゃがれがかった丁寧な歌い方も好み。時代を反映してか、マイナー(ダウナー)な曲調が多いが、暗くはない。ソウル、レゲエ、ゴスペル、ほか多くの音楽が入っているが、本当の意味でのジャンル分け不要の「ワールド・ミュージック」になると思う。また、ジャケットは、ダークブラウンが中心で、双子のキュートさ、タイトル、名前のかすれ気味の大きさとフォントも含めて、大変素晴らしい。見かけは同じ双子でも、内面はまったく異なり、陰と陽を持つことを、このアルバムの持つ「世界的な問題への問いかけ」と「陽気」という2面性の象徴にしたかったらしい。
 ア・カペラだと、ヴォーカルサンプリングというグループのCD「ヴァケーション」を持っているが、これは6人による楽器も模した完璧なキューバサウンド。また、リチャード・ボナには、ボナ一人の多重録音によるライブや曲もある。
 一方、ファーダ・フレディは、多くの人からなる多種のコーラスパートと足のタップを含むボディパーカッションが、必要最小限に、かつ、3次元的に繰り広げられることに特徴がある様に感じる。結果として人間味あふれる音楽になった。オープニングからメロディ、リズムで引き込まれるが、「Generation Lost」から大きく盛りあがってくる。エモーシャナルなコーラスと、ボーカルのベース。「We sing in time」, 「Slow down」や、「Little black sandals(カバー曲)」は繰り返しのフレーズが印象的な、それぞれが佳曲。そして、最後は祈りのようなエンディング。最大の愛聴盤の一つになりそうである。

Gospel Journey

Gospel Journey

ジョデシィ(Jodeci)の新作「The Past, The Present, The Future」

ソウル・R&Bシリーズ第4弾
なぜか去年のプリンスからソウル・R&Bづいている。前回に書いたK-Ci & Jojoが在籍していたR&Bグループがジョデシィ(Jodeci)。このJodeciが昨年のSoul Train Awardsに出ていたときに歌ったビデオ(http://bmr.jp/news/129675)にぐっときたが、なんとそのJodeciが20年振りに復活し、アルバムが出ることになった。
 今のところ、Jodeciハイレゾ音源はなさそうなので、フィジカル(輸入盤CD)を予約したが、到着日には、サザンオールスターズの「葡萄」のフィジカルも届いた。どちらから先に聞くのか?これこそ、内なるうれしい悲鳴だった。
 「The Past, The Present, The Future」のジャケットは、20年振りにも関わらず、きわめて地味なもの。K-Ciのディープな歌声は健在で、イマドキ、まさに「絶滅危惧種」、「天然記念物」の歌唱ではないだろうか。素晴らしい。ぜひ保護をお願いします(誰に?)。2曲目「Sho Out」から5曲目「Every Moment」の流れが特に素晴らしいし、シングルカットの「Every Moment」は、シンセのフレーズも含めてたいへんかっこいい。
バラードの「Jennifer」も含めて、もちろん全曲気に入っています。

The Past, the Present, the Future

The Past, the Present, the Future

ケーシー&ジョジョ(K-Ci & JoJo)の「ラヴ・オールウェイズ(Love always)」の深いソウル度

ソウル・R&Bシリーズ第3弾
K-Ci & JoJoは、Cedric "K-Ci" HaileyとJoel "Jojo" Haileyのヘーリー兄弟によるR&Bのデュオグループ名。この「ラヴ・オールウェイズ(Love always)」は1997年のデビューアルバム。 R&Bのグループって日本も含めてたくさんあるが、他とはっきりと一線を画すのは、兄のK-Ciの圧倒的なディープな歌唱力で、私は歌っているのを聞くと、地面にしっかりとそびえ立つ太い一本柱を思い浮かべてしまう。教会でのゴスペルで鍛えてきた歌唱力は素晴らしいし、オーティス・レディングなどからのソウルがここに引き継がれている。
 オープニングのHBIは、何度聞いてもすばらしい臨場感のあるライブだが、残念ながら少しで終わってしまう。擬似ライブかもしれないが、この短いオープニングはK-Ci & JoJoの全アルバムの特徴でもある。2曲目の「Last Night's Letter 」からK-Ci節が炸裂していくが、アップ、ミディアム、バラードなど多彩で、どれも曲が良い。いいアルバムです。

ラヴ・オールウェイズ

ラヴ・オールウェイズ

オーティス・クレイ(Otis Clay)の「ライヴ!(Live!)」のディープな名唄

ソウル・R&Bシリーズ第2弾
プリンスの「アート・オフィシャル・エイジ」は、その後も何度も聞いている。それまでは、安室奈美恵の「Can't sleep, can't eat, I'm sick」を聞くと、あっ、プリンスだと勝手に安室チャン越しにプリンスを幻視したりしていたが、今のプリンスがプリンスだという当たり前なことに思い至り、素直に「アート・オフィシャル・エイジ」を楽しんでいる。
そんな中で、去年末にソウルの名盤がCD化された。オーティス・クレイ(Otis Clay)の ライヴ!(紙ジャケット仕様) 。これはアナログレコードで持っていたが、4年前の断捨離で買取処分をしていた。その後、CDとしてまだ発売されていなかったのを知って悔しい思いもしたが、めでたくデジタルリマスターCDに。
1978年当時、O.V.ライト(O.V.Wright)が病気で来日できなくなったので、急遽オーティス・クレイが起用されたというコンサート。単なる代役ではないという本人の意地もあったと思うが、すごい感動を呼んだライブであることは、これを聴けばわかる。「Let me in」,「Precious precious」などの名曲を含め、ディープな名唄が楽しめる。なお、そのビクターよりハイレゾ音源も出ているので、好きな人はこちらもお勧めします。

ジャクソン・ブラウン(Jackson Browne)とリッケンバッカーの12弦ギター

今月のジャクソン・ブラウン(Jackson Browne)のライブ。ジャクソン・ブラウンは、デビュー時から「Hold out」までは良く聞いていた。その後、遠ざかっていたが、1996年の「ルッキング・イースト」や、その頃のライブ「ゴーイング・ホーム(Going Home)」(レーザディスク)は持っている。「Going Home」では、「Sky blue and black」「In the shape of heart」などのいい曲があったが、そのサウンドの要は、ギターのマーク・ゴールデンバーグだったと思う。マーク・ゴールデンバーグと言えば、クリトーンズというグループのリーダで、当時好きだった「ジャスティン」(シングル盤)を買ったこともある。また、昨年は「Late for the sky」の40周年ということで、そのハイレゾ版をHDTracksで購入するなど、時々思いだしたように聞くことがある。(なお、ハイレゾの音は以前のCDと変わらず、至って普通だった。)
今回のライブも、サウンドの要はギタリスト2人で、1人(ヴァル・マッカラム)はデレク・トラックスの風貌を思わせるが、マーク・ゴールデンバーグのサイドにいたらしい。もう一人のギタリスト(グレッグ・リーズ)は、ラップ・スティールギターやペダル・スティールギターなど何でも弾けるすごい人だった。ライブの個人的なハイライトは、新作の「スタンディング・イン・ザ・ブリーチ(Standing in the Breach)」のオープニングの「The Birds Of St. Marks」 だった。「Going Home」にも入っていたこの曲は今回のアルバムに収められたが、タイトルBirdsにあやかってか、アレンジもThe Byrds(ザ・バーズ)風となっている。グレッグ・リーズの弾くリッケンバッカーの12弦の音色や、2人のギターの掛け合いのサウンドはまさに快感。もっとも涙腺がゆるんだのは、「テイク・イット・イージー」から「泉の聖母 (Our Lady of the Well)」 に、アルバムのように移行した時。もっとも今聞きたかった曲はFor Everymanだが、結局ライブではやらなかった。

Standing in the Breach

Standing in the Breach

クリストファー・ノーランの「インターステラー」(INTERSTELLAR)(一部ネタバレあり)

一球入魂で映画を見る前には、その映画に関する情報をすべて見聞きしないようにしているが、ひょっとして、がっかりだった「アルマゲドン」のような映画なのかと思った時もあったが、月とすっぽんの素晴らしい映画だった。

 SF映画の金字塔として著名な「2001年宇宙の旅」は何回か見ているが、見るたびに、モノリスに象徴される一神教を崇めているところに心底納得できないものがあった。「インターステラー」では、初めは「誰か」が作ったことになっているが、後半で「誰か」が明らかになることで、自分にあったわだかまりが払拭された。このため、個人的には、「2001年宇宙の旅」を軽く乗り越えたと感じた。また、昨年末に見た「ゼロ・グラビティ」も素晴らしい映画だったが、最後があっけないところに不満が残ったが、「インターステラー」は最後に大きく盛り上がりを見せ、感動させられた。主人公(マシュー・マコノヒー)が自分の家の部屋を見るシーンに「ロボコップ」を思い出したが、初めは恐ろしく感じた人生のライブラリ空間も、次第にその映像の美しさに魅せられた。また、「メメント」に始まり、前作「インセプション」にもあった意識の時間のずれも、今回は一般相対性理論を用いて、再度出現させているところも憎い。

さすが、クリストファー・ノーラン.........。クリちゃん、素晴らしい映画をありがとね(「信長協奏曲」の小栗旬風)。

 そして、来年3月の、現在のコンピュータの基礎となるチューリングマシンで有名なアラン・チューリングを描いた「イミテーション・ゲーム」と、同年12月の「信長協奏曲」のロードショーを今から待っている。

プリンス(Prince)の新作「アート・オフィシャル・エイジ 」「プレクトラムエレクトラム」

プリンス(Prince)のニューアルバム「Art Official Age」。古巣のワーナーに戻っての初めてのアルバムということで、私としては「ラブセクシー」以来遠ざかっていたものの、期待できる何かを感じ、予約を思い立った。デジタル音源は44kHzではあるが24bitのため、これを10ドルちょっとで買える本家のWarner(http://order.artofficialage.com/row/)で予約購入。発売日の9/30以後聞いてきたが、オープニングのテープ早回し効果音などでがっかりしたものの、全曲聞くと、出色の「This could be us」をはじめ、「Way back home」「Time」などメロウなR&Bなども多く、曲の良さにはまってしまった。その後、ネットのサイトamassで、プリンスが、米TV番組「Saturday Night Live」に出演、演奏したシーンを見て、その力あふれるギター演奏にぐっときて、3rdeyegirlの「Plectrum Electrum(プレクトラムエレクトラム)」も追加ダウンロード購入。その番組でもやっていた「Another love」などは素晴らしいストレートなロックだが、エレクトリックギターのソロにも、またアルバムの随所に聴かれるワウワウギターの音色にも揺さぶられる。美しいバラードも入っており、このアルバムも、全曲を通して聴きとおせる。
 もう名作「Sign O Times」の再現をいつまでも期待しても仕方がないのかもしれない。そして、今回同時に出た2つのアルバムを、PrinceのR&B、Black Rock、バラードを柔軟にこなした2枚組みアルバムとして一緒に聞いた方が良いと思う。「プレクトラムエレクトラム」は3rdeyegirlだが、「アート・オフィシャル・エイジ」のジャケットは"3rd eye boy"でもあることだし。
 Princeのハイレゾ音源は「Parade(パレード)」を持っているが、ワーナーに復帰したので、今後、まだ出ていない「Sign O Times」などのハイレゾ配信の早期化を待っている。

ART OFFICIAL AGE

ART OFFICIAL AGE