桑田佳祐と、ボブ・ディランのローリング・サンダー・レヴュー

桑田佳祐の歌う姿が去年の大晦日NHK紅白歌合戦で見られて、まずはほっとした。今後も無理をせずに、と願う限り。新アルバム「MUSICMAN」に入る「銀河の星屑」が、1/12からのドラマ『CONTROL〜犯罪心理捜査〜』のエンディング曲になった。いい曲と思ったと同時に、バイオリンを大幅にフィーチャしていることで、ボブ・ディラン(Bob Dylan)のハリケーン(Hurricane)を思い出した。

ハリケーンは1976年のアルバム「欲望(Desire)」に収録されたシングルヒット曲。ディランが無実を信じるボクサーのルビン・カーターを救うために作った曲で、ハリケーンだけでなく、「欲望」にはバイオリンが大幅にフィーチャされていた。路上でバイオリンを弾いていた無名のスカーレット・リヴェラ(Scarlet Rivera)を見て、ディランがすぐにスカウトしたというエピソードを覚えている。ディランの真骨頂はブルース(カントリーブルース)にあると思うが、この「欲望」はブルース色が少なく、ロック色の高いアルバムで、当時、ディランでもっとも売れたアルバムとなっていた。でも、このアルバムではなく、ブートレッグシリーズ(Bootleg Series) Vol.5 のローリング・サンダー・レヴュー(BOB Dylan Live 1975)を紹介したい。
この「欲望」のプロモートのため、ローリングサンダーレビューという大所帯のメンバーによる米国縦断のライブツアーが行われた。このツアーは、第1期(1975年秋)と第2期(1976年春)に分かれていたが、当時から第2期の評判は悪かった。実際に世に出たライブアルバム「激しい雨(Hard rain)」は、この第2期のライブで、今聞いてもやはり荒っぽい感じが強い。2002年にやっと出た第1期のライブ「ローリング・サンダー・レヴュー」は、これとはうって変わって素晴らしい。ディランは、いわゆるカントリーロックなんて(わざと)やらないのだが、このときはカントリーロック風あり、7曲目の「ミスター・タンブリンマン」から「ブルーにこんがらがって」までのディランのアコースティックコーナあり、と。こんなのどかな「I shall be released 」は珍しい、実にのんびり、ペダルスティールギターが流れていく。
でも、最大の白眉は、Disk1の2曲目の「悲しきベイブ It ain't Me, Babe」。この曲は 200回以上は聞いていると思うが、いまだに飽きない。ギターはMick Ronson(ミック・ロンソン)(モット・ザ・フープルの「すべての若き野郎ども(All the Young Dudes)」って、古すぎる?)、ペダルスティールギターなどの豪華な演奏陣による、大きなうねりと、リズムののりと、ディランの歌の「タメ」と「ノリ」が素晴らしい。「そんな男じゃないんだ、俺は」と歌うが、色々な意味にも受け取れる。このアルバムを正規版で先に出していたら、と思う。当時はロックの時代で、第2期のハード中心のものでリリースしたかったのだろうか?

さて、最後になったが、Richard Bonaが来週またやってくる。ライブが楽しみである。今回は、1/23に子供のための本当のジャズ体験と銘打った新企画のライブもある。ぜひどうぞ。
http://www.bluenote.co.jp/jp/artist/richard-bona/

ローリング・サンダー・レヴュー (通常盤)

ローリング・サンダー・レヴュー (通常盤)